Novel
小説
XX年前
変な子供を拾った。いや、正確に言えば、捨てられていたのを保護した。
サーカスを未だに見せ物小屋と勘違いする輩がいるが、この子を捨てていった人間もそうらしい。
「この子は変身能力があります。うまく使ってやってください」
とだけ書かれたメモに最初は何を言っているのかと怪訝に思ったが、なるほど確かに変身能力があるらしい。
ほんの一瞬部屋から離れただけなのに、片手で抱えられるほどの幼女だった「それ」は、自分の3倍近くはあろう俺そっくりになっていた。
自分が2人いるとは奇妙なものだ。しかし、正直団員が少なくて一人一人の負担が増えている今。猫の手も借りたい状況に、この贈り物は天からの恵みなのかもしれない。
異質だ、奇妙だ、と避けられる者も、ここでは誇るべき立派な「個性」だ。
こんな幼い子供に負担をかけてしまって申し訳ないが、その分衣食住の補償と最低限の教育は与えよう。だからどうか、このサーカス団を、救って欲しい。